日本商工会議所だより

5月25日(水)開催「日本デ-・日独経済シンポジウム」

毎年日本デーの一環として開催される日独経済シンポジウム、今回は5月21日の文化・市民交流祭に引き続き、5月25日にホテルKÖ59(旧ホテル・インターコンチネンタル)にて「サステナブルな将来に向けた新素材-その開発、利用、リサイクリングー」をテーマに3年ぶりに実開催形式で開催され、約240名の方々にご参加いただきました。冒頭、ピンクヴァルト州経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー大臣、岩間総領事、ケラー市長、奥村会頭があいさつの言葉を述べられ、州ナノマイクロ素材フォトニクスクラスター・マネージャーのクレーマー氏の司会のもとプログラムが進行しました。
シンポジウム前半の基調講演では、東京工業大学副学長(戦略構想担当)生命理工学院教授の三原久和氏から「東工大の統合的なバイオ戦略における新素材、物質生産への挑戦」をテーマに、東工大が統合的ライフサイエンスを研究活動の中期的な戦略分野の一つに位置付けており、ゲノムエンジニアリングを活用してバイオ燃料、自然に還る生分解プラスチックなどの素材の開発などに取り組んでいることについてお話しいただきました。またマックスプランク鉄鋼研究所所長兼ミクロ構造物理学及び合金デザイン部部長のディアク・ラーベ氏から「サステナブルな金属とサーキュラーエコノミーにおけるその重要性」をテーマに、金属物製造の際の資源利用量を減らすための使用済み金属の再利用・リサイクルに関する研究や水素やプラズマを活用した金属物製造の際に発生するCO2を削減するための技術の研究についてお話しいただきました。

 S3 Linksご来賓・ご講演者の方々 © JIHK

 

三原氏は事情により訪独することが不可能になったのですが、東京とデュッセルドルフの会場をオンラインで結んで東京からご講演いただきました。コロナ禍の際にオンラインによるセミナー等のイベントを実施しながら蓄積してきたノウハウがここで生かされました。
シンポジウム後半では、日独双方7つの企業(Evonik Japan Co., Ltd、旭化成、HoDforming GmbH、三菱ケミカル、Henkel AG &Co.KGaA、帝人、Global Entrepreneurship Center)による実践例が紹介されました。旭化成からは水力由来の電力と水素によるアンモニアの製造、リチウムイオン電池製造の際のCO2の利用、バイオマス由来の素材の開発などのカーボンニュートラルへ向けての取り組みが、三菱ケミカルからは廃プラスチックの油化、ペットボトルや炭素繊維のリサイクルなどの顧客やサプライヤーなど様々なプレイヤーとの協力によるサーキュラーエコノミーに向けた取り組みが、また帝人からは製造工程での再生可能エネルギーの活用やCO2削減に貢献する製品開発、素材の再利用の研究などのサステナビリティのための取り組みが紹介されました。ドイツ企業からも製品の再利用・リサイクル、生産の際に利用する原料の削減、CO2削減に貢献する製品の開発などの取り組みが紹介されました。その後、パネルディスカッションでは、会場の参加者からの質問も交えて、環境にやさしい素材の開発を進めるための政治・行政の支援の重要性や、これら素材の市場をどのようにして作るべきかについて議論が行われました。日独双方の企業が環境問題に対応する、あるいは環境問題の解決に貢献する素材の開発に活発に取り組んでおり、両国間の協力の可能性も示された一日となりました。
シンポジウム途中のコーヒーブレークや終了後のレセプションでは多くの参加者の方々がネットワーキングしておられ、久しぶりに対面でのコミュニケーションの機会を活用いただけたと思います。

S3 Rechtsパネルディスカッションの様子 © JIHK