耳よりコーナー生活編

マインツのグーテンベルク博物館を訪ねて
グーテンベルクの活版印刷発明からデジタル化への進化

今日の世界は良くも悪くも、グーテンベルクに負うところが大きい。
全ては彼が起源であり、我々は彼に敬意を表する必要がある。なぜなら、その偉大な発明がもたらした悪影響は、人類が受けた恩恵によって一千倍もかすんでしまうからだ。
―アメリカの作家マーク・トウェイン(1835-1910)

かねてよりドイツ語の恩師から「是非行きなさい」と長年勧められていたマインツの"グーテンベルク博物館"にやっと行くことが出来ました!嬉しい事に同地の有名な楽譜出版社"ショット創業250年記念特別展"も同時開催されていて(ベートーベン生誕の年1770年創業)、秋晴れの素晴らしいお天気にも恵まれたとても想い出深い旅となりました。

「現代の印刷技術の父」と称えられているグーテンベルク、彼の名を冠したこの博物館の中にはそれぞれの時代に於ける活版印刷の機械や道具に加えて『人間の飽くなき追求欲、それに勝るとも劣らない弛まぬ努力』が詰まっていて、「凄いことができるんだなあ、人間って!!」と驚きの連続…。
本や雑誌、新聞などを手にするよりもPC、スマホ、電子ブックを利用することの方が多くなっている昨今の我々ですが、長い年月をかけた先達の大変な努力の延長線上にこの便利さを享受できているのだ…との思いを馳せながらせっせとスマホで写真を撮っている始末…。

グーテンベルク博物館は生誕500年を記念して1900年に開館されました。
大変に有名な"グーテンベルク42行聖書の冒頭"、"ヒエロニムスの書簡"を始め、専門書や映像でしか観られなかった活版印刷された文字の後に修道士が手書きで装飾を施し、文頭を太字にして金粉まで使用されている美しい本の数々!!加えて中国(中国の円盤型の文字型入れは興味深く、感心しました)、韓国などの印刷道具、それによって作製された手紙や版画など…驚いた事に日本の著明な浮世絵も展示されていて、自国でも鑑賞の機会があまりないかもしれない広重、写楽、北斎の作品も観る事が出来ました。

グーテンベルクの発明とされる印刷技術は羅針盤、火薬とともに「ルネサンス三大発明」の一つにあげられます。グーテンベルクが発明した活版印刷技術は急速に普及し、ニュースや書籍の流通速度を劇的に速める事になりました。更に印刷技術はルネサンスの拡大にも貢献していて、ギリシア、ローマの古典書が大量に出版され出回りました(もっとも多かったのはギリシア語、ラテン語聖書)。これらの書物が研究されたことが宗教改革にいたる地下水脈の一つになっていきます。15世紀中に金属活字を用いて印刷された書物は現存数も少ない大変貴重なもので「インキュナブラ」と呼ばれています。やがてヨーロッパの印刷の中心地はヴェネツィアに移り、ギリシア、ローマの古典が印刷されるようになっていきます。因みに当時のイタリア経済は急速に発展し、印刷物での読み書きも同様に急速に普及していきました。若きクリストファー・コロンブスは父ドメニコに活版印刷で印刷された地理の本を買ってもらったことがあり、その本は今ではスペインの博物館にあります。また、印刷技術は宗教改革で重要な役割を果たす事になり、殊にマルティン・ルターの『95ヶ条の論題』は印刷されたことで広く普及しました。その後、贖宥状を批判する文書をブランケット判の紙(日本の新聞1ページ分の大きさ)に印刷して配布され、これが後の新聞の元になったとされています。
版権の切れた著作物を収集する電子図書館プロジェクト・グーテンベルクや『グーテンベルグの銀河系(英語版)』(マーシャル・マクルーハン著)などは、彼に因んだ名称です。

グーテンベルク生誕の地、マインツには楽譜出版社のショット、ドイツ三大大聖堂のマインツ大聖堂があり、加えて人類初のmRNAワクチン開発製造に成功した『バイオンテック社』の本社所在地でもあります。

生活部ボランティア 河添良子

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© Gutenberg-Museum

 

S11 rechts
© Gutenberg-Museum