自由コラム

卵にまつわるお話

ドイツ人にお馴染みのたまご屋の歌、Klingelingeling, klingelingeling hier kommt der Eiermann(仮訳:チリンチリン、チリンチリンベルを鳴らしてたまご屋がやって来る)は、昔の日本のお豆腐、焼芋、金魚や竿竹の行商と同じくドイツのたまご屋の行商の一つの名残りの歌です。
現代では、これに代わり、過疎化の村では、移動式のスーパーの車がパン、牛乳やチーズ、肉やソーセージなどの食品と日用雑貨を売りに来ます。多少割高ですが、ご年配の方々には、町に出かける煩わしさが解消でき、手軽で便利と重宝されているようです。
以前、田舎に住んでいた頃、隣の農家ではジャガイモや豆、キュウリ、レタス、リンゴ、イチゴなどを自家栽培しており、余った野菜や果物をよくバケツ一杯貰ったものでした。また、卵の在庫がない時には、気軽に隣近所に貰いに行ったものでした。
デュッセルドルフに住み慣れて、ある日、週末に無性に杏茸入りのオムレツが食べたくなったことがありました。早速、開いているガソリンスタンドのスーパーとキオスクに行きましたが、どちらも卵を置いていませんでした。キオスクの叔父さんから、「隣のピザ屋にきいてみな」と言われ、半信半疑でピザ屋に直行。ピザ屋の主人からは、「ピザ屋だから、卵は販売していないよ。」と予想どおりの返事がかえってきました。ところが、キッチンから10個入りの卵を取り出してくれ、「困っているようだから」と売ってもらいました。小さな親切と一緒に“Klingelingeling”とたまご屋の歌詞が心に鳴り響き、その日はとても幸せな気持ちになりました。

編集委員 内間 ゆかり