Covid19 ドイツの現状 2020年4月12日
医学博士 篠田 郁弥
いろいろな情報が飛び交い、日本では「コロナ疲れ」という言葉もあると聞きます。「コロナ疲れ」は不安からきているように思います。正しい知識を得ることで「不安」を解消しましょう。今回はここドイツで皆様が少しでも安心できるよう、ドイツの研究施設、緊急医療現場を知る医者・大学病院、その他入院施設またドイツ医師会正式会員として厚生機構内情を知る医者の立場で具体的に示します。
Covid19は「風邪」の一種です。
「風邪」を医学的に表現すると「原因不明感染性気道炎」。これがPCR-テストで陽性の場合は「Covid19新型コロナウイルスによる感染性気道炎」と名前がつきます。コロナ感染=肺炎ではありません。Covid19も臨床的には50%は無症状、30%は軽症で2週間の在宅での対症療法で解決できます。医療崩壊を起こすのは残り20%と言われ、重篤者はそのうち5%前後です。
軽症というのは日本人だったら会社に行くレベル、責任感で風邪薬で熱を下げながら会議に出席するレベルですが、今回は、この軽症者から世界中に広がりました。
対処は?薬がないけれど。。。
一番大事なのは自宅での安静療法で、主に熱や咳に対する対症療法です。なおドイツでは通常、隔離といえば自宅隔離を指します(häusliche Quarantäne)。入院は医学的処置が必要になった時、もしくは行政指示を守らない場合です。
国立国際医療研究センターの医師が日本で提案しています。
〈https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200328-00170113/〉
・軽症者は入院とせず自宅療養とする
・感染症指定医療機関以外の医療機関でも中等症の新型コロナ患者の診療を行う
実はこれは、すでにドイツで実施されていることです。
「たかが風邪」でも通常3~7日間にわたる医師の労働不可証明(Arbeitsunfähigkeitsbescheinigung, AU)を発行することが法律で決まっています。感染防止が主目的です。
これは在独日本企業の方々が不思議がる制度です。しかし「人との接触を最低限に抑える」というのは、感染症疫学の基本中の基本で、至極合理的です。
パンデミックは一部地域だけでなく世界中に広がったのでつけられた学術名称です。最初の感染者は少人数でした。調べるまではわかりませんでした。職場での一人二人の病欠は不便はあるが会社全体組織の崩壊を招きません。複数感染者が潜伏期間に満員電車で出勤すれば集団感染・オーバーシューティングの原因となり得ます。
企業は社員が休んだ分の補填を保険機構から受けています。疫病との苦しい戦いから得た教訓を活かすというドイツの姿勢に先人の知恵を感じます。
ドイツどうなの?
医療崩壊を防ぐための準備として、ドイツでは入院施設と外来医療制度を2月26日から計画し、革新しました。地域医療が機能するよう、多数項目を暫定的に決めました。(例:電話・オンライン診察許可他)これは感染者の外出移動を減らすと同時に医療関係者の感染防止となります。また入院施設・集中治療施設の大幅な確保はドイツ全国で3月16日から実施されています。
現状「ただの風邪」はありません
「風邪」の症状があれば現段階ではCovid19感染の可能性が高いと考えます。「ただの風邪として」受診した場合、医療関係者は無防備状態で診察することになります。その後陽性と判明すれば、病院・医療施設ごと2週間の診察禁止となります。病院数の減少は、たちまち混乱・医療崩壊に繋がります。
・感染経路がはっきりしている場合(感染者とコンタクトがある場合)
デュッセルドルフ市の場合0211-890960に連絡をしてください(ドイツ語)。指定時間に検査が行われます。検査結果には数日を要します。
・感染ルートがはっきりしない場合
ホームドクターに必ず前もって電話連絡してください。電話にて指示を仰いでください。
現在(4月5日)「心配だから」での検査は行っておりません。検査液体は公的資源であり、今後不足する可能性が濃厚です。
もし感染したら?
80%の人にとっては「ただの軽い風邪」です。恥じることも、恐れることもありません。過度の安静は逆効果です。可能な限り時々起き上がり、水分補給に心がけてください(合併症予防)。体温を口内測定し1日3回記録してください。脇下は目安です。家庭内では感染者はマスクをしてください。マスクは自身の感染保護ではなく、他人にうつさない為のものです。部屋・食事を別にする等の衛生管理に気をつけてください。ドアのノブ、電気スイッチの消毒もお忘れなく。
買い物などは家族・知人にお願いし外出は禁止です。(参考資料:日本クラブHPに掲載されているデュッセルドルフ市からの各世帯に配布されたレター内容をご確認ください。)
もし重症になったら?
通常であれば重症の20%も「高度技術医療で救える」という考えでドイツ政府は準備しています。重症の場合は入院となります。入院準備等は病院の状況により異なります。詳細は必ず入院する病院にご確認ください。
日本集中治療医学会のHPにおいて、「ドイツの致死率が国際比較で非常に低いことに注目し、それはドイツ医療水準の高さ故と認識している」という記事がありました。
自宅待機
この難局下は、家族のつながりが重要です。規則正しい生活をしつつ、メリハリをつけることも重要です。仕事や勉強時間を決めるとともに家族で過ごす時間もキープする(例:時間を決めてボードゲーム、一緒に歌を歌うなど)。それと同時に一人で好きなことをする時間も必要です。家族間で相談しプランを立ててみてはいかがでしょうか。このようなコミュニケーションを持つことが連帯感に繋がるでしょう。精神的に不安を感ずる場合はオンラインでカウンセリングなども考えられます。家庭内暴力がある場合は警察や専門機関に相談しましょう。また子供に対しての虐待にも気をつけたいことです。我々の親、祖父母もいろいろな危機を克服してきたことを思い出しましょう。
ドイツの患者数の多さはなぜ?
ドイツは検査件数が高い国の一つです。ドイツでは約10万人感染者が確認されています。それは3ヶ月間の総計50万件検査の結果です(4月4日時点想定)。現在は一週間で30万件以上検査されています。軽症の人も国際的ルールのもと検査しました。
参考:日本のPCR検査3か月累計は4万人。感染症数は3,191件。(4月5日)
〈https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/〉
致死率は病気の特異性を表す指数で「その病気の怖さ」を表します。
全世界では約1%(ドイツ・オーストリア)から10%までの差があります。(日本は4%)
致死率が高い場合は症例検出件数不足や総合医療水準問題が考えられます。
国際的には検査実行件数の確認バロメーターとしても考慮されています。
いつまで続くの?
人口の60%の集団免疫がつけば、この病気も「普通の風邪」になります。免疫ができるのは、感染回復か予防接種です。無症状感染者も含みます。無症状感染免疫についての国際的研究はもうドイツのホットスポット ハインスベルク郡(Heinsberg)で途中報告されています。
予防には?
石鹸・洗剤で手を洗う。
ウイルスは油性の膜で覆われています。この外膜は石鹸20秒使用で破棄され、ウイルスの攻撃力はなくなります。見落としがちですが、買い物などの商品の包装として使われている金属・プラスチックは中性洗剤のしみた布で拭くことによりウイルスを不活性化できると言われています。一般の方のマスクは、知らない間に他人にウイルスをうつさないという意味はあります。皆様は「自分が保菌者であるかもしれない」という前提で行動してください。
ドイツの当面の問題は
現在ドイツでは医療現場で防御資材が不足し国家の大問題となっています。「ご自分・家族が必要となる時に医療崩壊していた」という最悪の事態を防ぐためにも、医療用FFPマスク・手袋・消毒薬などの買いだめは避けるべきです。
Bleiben Sie Gesund. 健康第一に。
ドイツ公認検定 総合内科専門医・地域医療家庭医療
ドイツ公認無制限医師免許(Deutsche Approbation)
ドイツ公的保険医療認定医(Zulassung für alle Kassen)
デュッセルドルフ大学非常勤講師
Facharzt für Innere Medizin 医学博士 篠田郁弥