思春期の予防接種と予防医学
ドイツの医療制度は思春期には次のことに重点を置いています。
必須
1.予防接種
2.青少年定期検診 Jugenduntersuchung J1(12~14歳)
任意
青少年定期検診 Jugenduntersuchung J2(16~17歳)
1〜2歳の幼児期に予防接種を行うことで基礎免疫がつきます。青少年期は基礎免疫からすでに10年が経過しています。この時期は10年ごとに行われる免疫力強化・追加の予防接種の時期に当たります。
この時期に予防接種を行うことにより、基礎免疫が10年間延長され、20代まで免疫が残ります。これが防げる病気に対しての親として子供にしてやれる最後の機会になります。(次の免疫延長は子供が成人してからとなりますので自己責任となります。これが、親が子供に予防接種の大切さを伝える最後のチャンスとなります。)
具体的に行われるのは次の項目です。
ポリオ・百日咳・破傷風・HPV・B型肝炎
注目していただきたいのは、HPVの予防接種です。これは、正式にはヒトパピロマウイルス感染症の予防接種です。日本では俗称「子宮頚がん予防接種」と呼ばれています。
ガンを中心に考えますと、子宮のみがクローズアップされておりますが、直腸癌・口腔咽頭がんにも関係があります。ガンの予防だけでなく難治の感染症の予防として大切です。ドイツでは予防接種実施開始後の追跡調査を行い、女性だけでなく男性の接種必要性が議論され、ドイツでは2018年秋からHPV予防接種がすべての子供に対し必須と決まりました。9〜17歳の間に受けることを推奨されています。できれば早い方が良いと言われています。ヨーロッパでは(デンマーク・イギリス・スウェーデン、オーストリア)子宮頚がんの50パーセント減・難治性感染症が90パーセント減ということが証明されています。
ヨーロッパでは、HPVは女性だけの問題ではなく、男性にも効果があるとされています。
日本では、この予防接種について様々な議論がされているようです。
副作用の弊害については、「副作用による難治性の病気の発生は認められない(2018年発表)」と長年の追跡調査・議論の上ヨーロッパ各国の医療機関は判断しました。
また、日本と違うのは、B型肝炎予防接種です。この予防接種は日本では医療関係者以外には行われていませんが、ヨーロッパでは26年前から小児・思春期を中心に続けられています。13〜15歳まで摂取していない人は3回摂取により10年以上の免疫を得ることができます。
これにより慢性B型肝炎と肝ガンの撲滅が期待されています。ヨーロッパでは、防げる病気は積極的に予防する考えです。ちなみに慢性肝炎の罹患率は日本の方が高いとされています。ドイツにいる間に受けられる予防接種は受けさせてあげるのが親の愛と言えるかもしれません。
青少年定期検診は思春期の発育(拒食・過食傾向なども含め)をチェックします。また、思春期特有の精神的・社会的不安定さを医学的見地からサポートできる良い機会です。
日本で社会問題となっている登校拒否なども含まれます。
なお、これはドイツの社会では努力義務と考えられております。ドイツの社会的問題と捉えており、国・社会がサポートしています。保険適応のもと公的保険指定医のところでは無料で行えます。(小児科もしくは公的保険指定一般内科Hausarzt)
ドイツの行政・司法では児童に関しての問題が起きた場合、J1を行なっていないということで児童虐待の隠蔽までも疑います。
子供は、家庭・学校・社会で守っていくものです。その実現のためにもJ1は必ず受けてください。何よりもお子様ご本人のためです。
備考:STIKOが決めている予防接種については公的保険でカバーされると思われます。例外があるので念の為各自保険会社にお問い合わせください。
プライベート保険もこれに準じているはずです。プライベート保険は、契約内容によって金銭的保証範囲が違いますので各自ご確認ください。
ドイツ公認総合専門内科医
デュッセルドルフ大学非常勤講師・臨床指導医
医学博士 篠田郁弥
(篠田診療所、Oststr.84, 40211 Düsseldorf, Tel.0211-161409)
診療時間:月~金(8:30~12:00)午後予約のみ