大人の予防接種
大人なのになぜ予防接種を?
理由は簡単です。免疫が無いからです。あっても不完全だからです。抵抗力は根性ではありません。抗体は科学的証明ができる事実です。
ウイルスや細菌などの病原体に出合うと生物は抗体を作り、中和反応を起こします。我々の選択は、抗体製造されるまで発病・後遺症(高確率の死亡も含む)を覚悟するか、科学の応用で抗体を作るかです。
接種後2週間で抗体はできます。但し「即効薬」ではありません。
病気にはかからない、軽くすむ、もしくは死亡しない、ということです。また病気減少により、社会の医療費や間接的援助費などが減ります。
予防接種の種類には非活性型と生ワクチンがあります。
・非活性型 (例えば破傷風・ジフテリア・肝炎、インフルエンザなど)
このワクチンには感染力がありませんので、この接種によりその病気に感染することはありません。
通常6カ月に3回接種を行い、基礎免疫をつけます。10年ごと接種を受ければ、免疫がまた10年継続します。日本の運転免許更新制度と似ています。
・生ワクチン (例えば麻疹・風疹・おたふく風邪 MMR)
人に対して病的破壊力を弱めたウイルスを用います。
例えていえば、剣道の練習を真剣でするか、竹刀でするかの違いです。
平均的な在独邦人に推薦される接種
(Robert-Koch-Institut: Epidem. Bulletin 34/2018参照)
ドイツSTIKO(ドイツ常任予防接種委員会)は約40年前に大人用の接種を開始し、臨床経験は他の国より豊富です。
次の*印は科学的観点からの公的推薦です。この記録がない場合は、国際的には未実施と判断されます。
1)*破傷風・ジフテリア・ポリオ・百日咳の4種混合
2)*MMR(麻疹・風疹・おたふく)3種混合(1995年から1970年ごろ誕生の方は2回目を受けていない可能性が非常に高い)
条件によって
3)*水ぼうそう(妊娠希望で抗体陰性の女性)
4)*肺炎菌 23種混合(60歳以上)
5)*インフルエンザ 4種混合(60歳以上、高血圧・糖尿など慢性疾患、その他リスク)
旅行を考慮して
6)A型・B型肝炎 2種混合(地中海・アフリカ・東南アジア)
7)FSME (ダニ脳炎)(南ドイツ・オーストリア・東ヨーロッパ)
8)日本脳炎 該当地区に帰省される方(特に西日本)
・個人的状況によりリスクは異なります。ここでは科学的観点から一般的に記します。(例えばヨーロッパ旅行をするなど)
・保険適応については各保険会社・機構にその可能性の有無をお尋ねください。
予防接種の副作用
副作用がごくまれに発生することは否定はできませんが、実際には痛み以外はほとんどありません。
1週間40度の熱を伴う疾患の接種後に、37,4度の微熱が1日出た場合は副作用と呼ぶかは疑問です。
予防接種の意義
1)病気の予防(防げとなる病気を防ぐ)
2)病気の合併症・後遺症を防ぐ (死亡も含む)
3)長期的に社会から病気をなくす(病気の撲滅)
科学の進歩により市民に公平かつ具体的に還元できるという事なのです。
国連機関WHOの文書や国際的研究を比較すると、各国の社会と国民の能力と努力が問われているように思われます。歴史的にみると、予防接種が普及している社会はひとえに医学の進歩、実用化出来る産業発展、それをサポートできる円熟した社会のお陰だと筆者は考えます。これは非常に有難いことです。
予防接種は認知と行動によって生活環境を改善できる一例だと思います。
この記事が皆様の予防接種についての考え方のガイドになれば幸甚です。
尚、上記の各種の予防接種は幣診療所にてもお受け頂くことが出来ます。