カメラテクニック:圧縮効果の世界
文化部副部長 堀 順一(Nikon GmbH)
圧縮効果という効果をご存知でしょうか。『被写体群において、離れている被写体間の距離感が少なくなる』という不思議な効果です。この効果を知っていると、より魅力的な写真が撮れるようになります。この場をお借りして、圧縮効果を使った撮影テクニックをご紹介させて頂きます。
○圧縮効果で密度を上げる
冒頭で簡単に圧縮効果について簡単に書かせて頂きましたが、言葉での説明は難しいので、まずは2枚の写真をご覧下さい。
ズームポジション※1:27mm(35mm換算)
ズームポジション※1:27mm(35mm換算)
※1:ズームポジションとは、レンズの焦点距離を指し、値が大きくなれば大きくなる程、ズームされた状態を指します。
木や人の間隔に注目すると、上の画像に比べ、ズームした状態の下の画像の方が、間隔が狭くなり、詰まった印象の画が得られます。これが圧縮効果と呼ばれている効果です。この圧縮効果を意識しながら、Bonnの桜並木、イルミネーション、Keukenhofのチューリップ、長く続く道路/街並み、道路脇の菜の花畑を撮れば、ズームをしない時とはまた違った印象の写真が撮れることがご想像頂けますでしょうか。
○圧縮効果で背景を引き寄せる
離れた丘から、大聖堂と一緒に記念撮影。撮ってみたら、あんなに立派な大聖堂がすごく小さく写ってしまう。そんなことありませんか。そんなときも、圧縮効果の出番です。
ズームポジション:27mm(35mm換算)
ズームポジション:37mm(35mm換算)
因みに、スマートフォンは、カメラを起動してズームしなければ、大凡どの機種もズームポジションは27mm程度(35mm換算)。つまり、上の写真に近い写真が撮れます。スマートフォンでも被写体からできるだけ離れて、ズームして撮影してみましょう。きっと、印象の違った写真が撮れるはずです。
○圧縮効果の使い方と使いどころ
ここまで読んで頂き、圧縮効果が何となくどんなものかご理解頂けましたでしょうか。しかし、ご理解頂けたとしても、なかなかどの場面で使えるかわからないもの。近年はデジタル化して何度でも撮ることができるので、以下の4つの場合にできるだけ被写体から離れて、望遠レンズ(又は、ズームした状態)で写真を撮ってみて下さい。きっと印象的な画が撮れると思います。
- 等間隔で物が沢山並んでいる
- 込み合った状態
- 引き寄せたい背景がある
- 長く見通しできる道路/街並み
○結び
圧縮効果はイメージが難しいので最初は使い辛い効果です。しかし、使えるようになると劇的に写真の質が上がります。そして、その頃にはきっと、スマートフォンのデジタルズームでは満足できなくなり、コンパクトカメラや一眼レフカメラなどの光学ズームを手にしているでしょう。とやや呪い気味の結びとなってしまいましたが、皆様の貴重な瞬間を、イメージのままに切り取る手助けになれば幸甚です。