耳よりコ-ナ-生活編

ドイツの住宅で快適に過ごすために 〜換気・カビ予防〜

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2015年12月にVerbraucherzentrale NRW(NRW消費者センター)より住宅エネルギーの専門家であるBeate Uhr氏を講師にお迎えして「ドイツでの暮らしを快適に過ごすために(住宅編)」の講習会が開催された。講習会の内容を基に、参加者からの身近な質問や、一般的な情報も加えて、ドイツの住宅で快適に過ごすための豆知識となれば幸いである。
Verbraucherzentrale NRW(NRW消費者センター)では、住宅・通信・健康・環境などさまざまな分野に渡り、われわれ消費者を保護する立場で各専門家が、トラブルなどの相談にのってくれる(有料、連絡先下記)。中でも今回取り上げる「暖房費・電気料金の請求が高くて困っている」「カビの発生」の相談は多く寄せられるそうだ。

まず近年のドイツの住宅の特徴をみると、高い気密性と断熱が挙げられるだろう。窓の構造は復層のガラスに樹脂素材のサッシが使われていて断熱性にすぐれている。またドレーキップ窓(内開き・内倒し窓)は、上下に可動部分がある日本の一般的な引き違い窓(左右に開閉する窓)と比較しても構造自体が気密性にすぐれている。その気密性の高いドレーキップ窓の密閉性を確かめる方法がある。大きめの紙を窓の縦方向に挟みしっかりとハンドルを閉めた際、紙が落ちなければ密閉されているが、紙が落ちてしまうようであれば空気が漏れているので、専門業者を呼んでサッシの調整が必要であろう。
また近年のドイツの住宅の屋根・床・外壁は断熱加工がされていることで、夏は太陽光の熱を遮り、冬は暖房で暖めた空気を外に逃がさない効果が得られるのだ。たとえば賃貸物件を探すときにも、断熱性の高い住宅を探すことができれば、一年を通じてより快適な環境で過ごすことができるであろう。

ドイツの住宅の特徴が分かったところで、つづいてドイツの住宅で快適に過ごすためには「換気」が重要なポイントになる。冬の快適な室内環境とは温度19〜22℃ 湿度35〜50%。ぜひHygrometer(温湿度計)を購入して、室内温度と湿度を計ってみることをおすすめしたい。換気の役割は、目に見えない有害な物質を新鮮な空気に入れ替えるのがひとつ。さらには湿気を含んだ空気を入れ替えることで、カビ予防に重要な対策となる。冬の寒い日や雨の日でも換気は必要で、1日2〜3回の換気を行うのが理想的だ。居室の効果的な換気には、窓を全開にして部屋の扉も開放することで、空気の流れを作り効率よく短時間で換気ができる。冬場の換気中は暖房を完全に切ることをおすすめする。その理由は、暖かい空気は飽和水蒸気量が多いため多くの湿気を含むので、できるだけ冷たい空気と入れ替えることで、再び暖房を入れた時により多くの湿気を空気中に取込むことができるのだ。一日中窓の上部を傾けた換気は暖房効率を下げるのでおすすめしないという。

暖房費の節約についてさらに触れておくと、室温設定を1℃下げると、暖房費が約6%の節約になるという。また暖房を入れない部屋(寝室等)があれば18℃ぐらいに設定し、部屋の扉は閉めておくことで、暖かい部屋の空気が流れ出して暖房効率を下げるのを防げるのだ。
数時間の外出時には、完全に暖房を切らずに設定温度を2〜3度下げるだけでも、暖房費の節約になることを覚えておきたい。冬に長期で家を空けるときには設定温度15℃が目安。完全に暖房を切ってしまうと、サーモスイッチ機能が自動で作動して再スタートしてしまうことがあるようだ。
一方でバスルームやキッチンの換気は少し異なる。湿気や臭気のついた空気を他の部屋に移動させることなく外気と入れ替えるには、窓は全開にするが部屋側の扉は閉めておくのだ。
例外として、床暖房は部屋が暖まるまで時間がかかるので、こまめな設定変更は効果がなく、温度調節にも工夫が必要だ。

それでは、夏のとくに暑い季節の換気はどうしたらよいのか?
ドイツではエアコン設備のない住宅が一般的だが、ここデュッセルドルフでも夏の暑い日が数週間はある。高い気密性を活かすには、まず窓に日射しが当たって暑くなる前の早朝に換気をし、冷たい空気を取込むのだ。そして日中はシェードを下ろして過ごし、室内の温度が上がらないようにすることで、冷たい空気を維持することができるという。ぜひお試し頂きたい。

ドイツに暮らす中で、カビの心配も忘れてはならない。カビはある程度の温度と湿気のある環境で、埃・塵・垢などを栄養素として発生する。シャワーのあとは、水分を拭き取り換気をしてカビの予防対策を心掛けたい。寝室は寝ている時の呼吸と汗から水分が排出されるので、朝の換気をお忘れなく。湿気をたくさん含んだ温かい空気が北側など室内の冷たい壁に接すると、空気の温度が下がり湿気を放出して壁にカビが発生する原因になるので、換気はカビ防止対策には欠かせないのだ。
バスルームなどにできてしまった少量のカビは薬局で購入できるエチルアルコール(Brennspiritus)で除去することができるが、目安として0.5㎡以上の広範囲のカビは専門業者に依頼した方がよい。消費者センターでも相談にのってくれる。(有料)

NRW消費者センター 連絡先:
Verbraucherzentrale NRW
Beratungsstelle Düsseldorf
Immermannstr. 51, 40210 Düsseldorf
www.vz-nrw.de/duesseldorf
Tel:(0211)710649-0

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今回の講習会には、Mieterverein(賃貸人を守る協会)から居住に関するトラブルに詳しい弁護士の方が来られて、騒音などに関する質疑応答があったのでご紹介したい。
ピアノや近隣に聞こえるような音楽鑑賞は、夜20時ぐらいまでの時間帯で1日に最低1時間は認められているが、その他は状況に因る。日曜日は騒音を立てない。などがドイツの慣習としてあるが、まず賃貸契約時の契約書に記載された注意事項をよく読み、困った時には専門家の力を借りて、ドイツの生活を快適に過ごして頂きたい。