自由コラム

ライン河畔のジョギング

毎週末ジョギングをしている。テオドアホイス橋とオーバーカッセル橋の間を15~16分かけて往復する。距離にして3.5kmぐらいだろうか。走り始めてかれこれ35年と年季が入っている。ドイツ研修生の頃、過酷な労働環境の下、ストレス太りで体重が80kgを超え、体質改善の必要に迫られたのが理由だが、元々運動神経が鈍く、それでいて勝ち負けに拘る性格なので、卓球、テニス等は論外。ゴルフも「自然との闘いですから」と言いながらも、ニギリの負けを根に持ったりするタイプなので却って不健全である。その点、ジョギングは孤独な自分との闘いと理由づけて走り始めた。若い頃は距離や時間に挑戦したり、ある種のランナーズハイに達する程熱心に走ったりしたが、今はすっかり達観して、無理のないペースで、河畔の風景を楽しみながらゆったりと走っている。
ところが、気持ち良くタッ、タッ、タッと走っていると、後ろから全く同じペースの足音が迫って来て、抜き去って行かれる事を度々経験する事に気が付いた。言うまでも無くコンパスの長短差に由来するものだが、あろうことか同年輩のご婦人にまで「頑張ってね!」風味の笑顔で抜いて行かれることも有り、落胆は大きい。ライン河畔のジョギングは時にストレスである。

編集委員 伊藤道生