「女川海物語」写真展
先日、小岩勉氏の写真展を見た。1992年刊行された「女川海物語」の中から小岩氏自身が選んだ30点余りと震災後の2点だ。飯子浜の見事な桜の写真から始まるそれらは、1988年から3年間、仙台から毎月女川の浜に出かけ、地元の人々の話を聞きながら撮られたものだ。その話は、原発建設の反対運動や住民間の対立、家族や仕事のことなど、苦しかったこと、悲しかったことが多かったという。しかし、写し出された顔はどれも穏やかで逞しい。一仕事終えて満たされた漁師の顔、畑仕事後くつろぐ女性たち、正月の獅子振りで太鼓をたたく粋な海の男と横笛を吹く子供たち、女川駅に立つ中学生。どれもどこにでもある風景だ。
この何事もない日常こそが私たちにとって幸せなのだと気付かせてくれる。震災後の一枚、ほぼ壊滅した市街地の奇妙な静けさの中に、再びあの賑やかさと日常が戻ってきて欲しいと願う。
(恵光文化センターにて、2月26日まで延長し展示)
編集委員 青木容子