ホンブロイヒ・ミサイル基地

S.10

やじ馬訪問レポート
Raketenstation Hombroichを訪ねての巻
Neussにある美術館Insel Hombroich(会報2月号掲載)を訪ねたのは、まだ雪の残る1月の事であった。季節は変わりゆき、桜の季節になった頃、今度は隣接するRaketenstation Hombroichを訪ねた。美術館から歩いて15分ほどだろうか。周りには見渡す限り、畑しか見えない。そしてそのど真ん中に、目指すRaketenstation Hombroichはこつ然と現れた。
緑豊かで、広大な27haの敷地内に建物が点在する美術館の方を敢えて“美術館村”と呼ぶのであれば、12haの敷地内に同じように点々と芸術家のアトリエが並び、また様々な芸術作品が屋外にも建ち並ぶこちらの方は”芸術家村“と呼べるのかもしれない。この土地は、元々は冷戦時代のNATO軍ミサイル基地であったが、その後、富豪のミューラー氏が買い取り、芸術家の為の場所として造り直され、Raketenstation Hombroichと名付けられた。
取材の日、広報担当のFrau Kimmelは寒風の中を「私はここの仕事に就いてまだ3か月なのだけれど」と言いながら、大変丁寧にガイドをしてくれた。

不動産で財を成した富豪ミューラー氏の珠玉の美術コレクションは、上記の美術館村Insel Hombroichに飾られている。ミューラー氏は芸術家にとり、大きなサポーターでもあった。そしてこの芸術家村Raketenstation Hombroichには主に、様々な分野で活躍する芸術家の住居、アトリエなどが置かれている。
在住の芸術家の一人には、彫刻・絵画などで活躍している西川勝人氏もいる。氏の作品は、多くの公共スペース、建物、美術館に展示・収蔵され、また氏はデュッセルドルフ市文化奨励賞を受賞もしている。敷地内でも特に目立つ西川氏の大きなアトリエと、屋外に飾られている巨大な作品群には、見ていて圧倒されるものがあった。
様々な形のアトリエや住居、芸術作品がゆったりと建ち並ぶ敷地の中、特に私達の目を引く巨大な建造物にHaus für Musikerという円形のコンクリートの建物やSiza Pavillonがあったが、いずれもまだ建築中という事であり、この芸術家村が今も発展途上にある事を知った。
ところで、実はこの芸術家村は基本的に住人である芸術家のプライベートな空間である為、訪問者は自由に敷地内を散策することは出来なく、財団のガイドツアー(有料100 €)を申し込まなくてはならない。唯一、ガイドなしで自由に外部者が訪れる事が出来るのは、庭Klostergartenだが、一般公開は5月からであって、この日はまだ見る事は出来なかった。
ただ、敷地内には利用に値する面白い場所がある。Kloster(修道院)と名付けられた宿泊所は、中庭に面して14部屋がある素敵なペンションだ。(一泊50 €、2泊目以降15 €・食事なし)部屋にはテレビもなく、その名の通り、世俗的な生活から切り離されている所なのかと一瞬思う。しかし、修道院とは名ばかりで、そこには宗教的な意味合いはなく、清潔で広々とした室内は明るく、中庭には美しい花が咲き乱れている。この日、中庭に建つ食堂では何かのパーティーの用意の最中で、なんとも言えないウキウキとした空気に満ちていた。結婚式のパーティーでもよく利用されているらしい。宿泊客の食事は、ケータリング会社で手配する事になっているが、面白い事に、この日のパーティーの食事の手伝いをしている可愛い女性は同村在住の芸術家で、「こういう時には私達が手伝う事もあるの」とニッコリしながら話してくれた。
またここに隣接するホールVeranstaltungshalleは、200名を収容することが出来る広々とした板張りの立派なコンサート会場で、グランドピアノが2台あった。会場は様々な用途にも使用されているらしく、この日はメルセデス・ベンツ社の社内研修が行われていた。その会場の周りにも、多くの巨大で壮大な屋外芸術作品が立ち並ぶ。これらの崇高な芸術品に囲まれていると、アーティストの研ぎ澄まされた感性が、直接体に突き刺さってくるようで、ワクワクするような刺激を受ける。何よりこの村に住む事は、芸術家にとり、究極の幸せなのではないだろうか。そう思えてならなかった。
取材後、自由に入れる敷地内のカフェKischken(水~土曜、祭日の12時~18時まで)で味わった手作りケーキやスープは大変美味であった。
敷地の一角には、建築家安藤忠雄氏の設計による高名な美術館Langen Foundationもあり、見事な日本芸術の収蔵コレクションを見る事が出来る。その美術館の入り口の桜並木が、この日は満開であった為、来訪を歓迎されているようで心が揺さぶられるほどに感激した。
しかし、この安藤氏設計の美術館と芸術家村は、実は全く関係がなく、違う財団によって運営されているという説明を受けた。
勿論、こちらは普通の美術館なので、ガイドなしで訪れる事が出来る。

Raketenstation Hombroich
Raketenstation Hombroich 4
41472,Neuss
www.inselhombroich.de
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文責・生活部 相馬邦子