日本商工会議所だより

ドイツ・イノベーション・アワードをご存知でしょうか?

~日独間の産学連携の構築と拡大を目的として~

メルケル首相はユーロ危機の中で、強い指導力を発揮し、国際政治の舞台でも存在感を高めたことや、好調なドイツ経済が評価され、同首相の人気を背景に9月22日のドイツ連邦議会選挙では、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が、得票率を前回に比べて約8ポイント伸ばし圧勝した。日本においてもアベノミクス、そのひとつ民間投資を喚起する成長戦略である日本再興戦略が進められている。日独において政治・経済の安定は、企業の活動にもプラスの影響を与えるものと期待している。

日本商工会議所への入会希望の問い合わせや相談件数も増えている。中には斬新な技術を持ったベンチャー企業の進出相談もある。日本企業は現下の円安で収益を高めており、長期的な成長の源になる次世代に向けた研究開発や効率的な設備、人材育成などに投資する絶好のチャンスが到来していると感じる。
成長著しい新興国に対抗し、日独両国においては技術革新、イノベーションの促進が緊急の課題となっている。

日本とドイツとの技術的な交流は江戸時代から行われてきた。西洋医学はその代表例であり、現代においても、欧州最大の貿易相手国として、また自動車や医療機器などのメーカーは日本でもポピュラーな存在であるように、日本産業にとってドイツが重要な国であることに変わりはない。

日本にあるドイツ商工会議所は、約430社の会員企業を擁し、ドイツ企業と日本企業が定期的に意見交換をする ビジネスセミナーやワークショップ、ネットワーキング・イベント等を展開している。2008年には、BASF、バイエル、ボッシュ、エボニック、ヘンケル、メルセデス・ベンツ、メルク、ショット、トルンプなど、日本で活躍しているドイツを代表する企業と在日ドイツ商工会議所が協力し、日独間の産学連携の構築と拡大を目的として、日本の若手研究者に授与するため、「ドイツ・イノベーション・アワード、ゴットフリード・ワグネル賞」が設立された。

2013年に第5回を迎えた「ドイツ・イノベーション・アワード」は今年6月に5名の受賞者が発表された。この賞は日本の若手研究者の支援と日独間の科学技術交流および国際的産学連携の促進を目的としており、受賞者には賞金(最優秀賞400万円)と、副賞としてドイツ学術交流会(DAAD)及びドイツ研究振興協会(DFG)よりドイツの大学・研究機関に最長2カ月間研究滞在するための助成金が授与される。応募対象は環境・エネルギー、健康・医療、安心・安全のいずれかの分野における応用志向型の研究で、現在進行中の研究または過去2年以内に完了した研究成果、応募資格は日本の大学・研究機関に所属する45歳以下の研究者となっている。

在日ドイツ商工会議所は、本賞を通じて日本の若手研究者を支援することにより、ドイツ企業と日本の大学・研究機関における長期的なネットワークの構築を目指している。これらを通して、日本の学術界との緊密な交流と産学連携が促進されることを大いに期待している。

本賞の正式名称である「ゴットフリード・ワグネル賞」は、明治時代初期に来日したドイツ人数学者、ゴットフリード・ワグネルにちなんで名付けられた。現在の東京大学や京都府立医科大学等で物理学や化学、理化学の教授を務め、東京工業大学の創立メンバーとしても活躍した人物で、ワグネルの優れた教育手法と才能は、当時の日本の教育制度の改革に大きな功績を残した。また、日本の美術工芸にも精通し、陶磁器やセラミックスの伝統工芸品の生産改善にも尽力するなど、幅広く活躍した。

ゴットフリード・ワグネル賞を受賞した研究者や受賞を目指して日々活躍する研究者から、日本・ドイツ、そして世界で活躍する人物が出ることを期待している。

以上